東京都にある自然豊かな亜熱帯の島、小笠原諸島。希少な生態系や自然が残っている島であり、固有種の宝庫と言われる小笠原諸島は2011年6月24日に世界自然遺産に正式登録されました。そもそも世界自然遺産に登録されるのには、「自然景観」「地形・地質」「生態系」「生物多様性」の4つのクライテリアのうち、1つ以上に合致することが必要になり、そのうち小笠原諸島は「地形・地質」「生態系」「生物多様性」の3つに合致したと考えられています。今回の記事では小笠原諸島が世界自然遺産の条件に合致した「地形・地質」「生態系」「生物多様性」の3つの点を詳しくチェックし、小笠原諸島の魅力を発信していきます!


世界自然遺産に登録されている「小笠原諸島」に行ってみたいな!

小笠原諸島ね!日本で世界自然遺産に登録されているのは「知床」「白神山地」「小笠原諸島」「屋久島」の4つだけだからね。その1つが東京にあると思うと凄いよね!

日本で世界自然遺産に登録されているのは4つだけだったのか!それは知らなかった!けど小笠原諸島って東京行くことができて、距離が遠くて時間かかるんだよね?

そうだね。片道船で24時間かかるね。かなり時間かかるけど、それでも行く価値のある素敵な島なんだよ!

世界自然遺産に登録されているもんね!でもどの点が世界自然遺産登録に繋がったのかなあ?

じゃあ、各項目ごとに小笠原の魅力を見てみましょう!

海洋性島弧の小笠原諸島



そもそもなのだけど、島弧って何?

島弧っていうのはね、弓なりに連なった火山列島でできた大陸の事を言うんだよ。日本列島も島弧の1つなんだよ。

なるほどね。この島弧って言う点が世界自然遺産登録の「地形・地質」の項目に当たるのね。

そういうこと!詳しく調べてみよう!

小笠原諸島の「地形・地質」


小笠原諸島は約4,800年前に海洋地殻の上に誕生した海洋性島弧と言われる島弧(とうこ)であり、弓なりに連なった火山列島でできた大陸であります。
沈み込み始めて間もない小笠原諸島の海嶺下のマントル(核のこと)は高温であったので、広範囲にボニナイト(マグネシウムの含む量が高い特殊な安山岩の一種)というマグマが発生し、プレートの沈み込みが進むにつれて島弧火山が誕生しました。

■小笠原諸島のボニナイト
約4800万年前に父島列島と聟島(むこじま)列島が形成され、約4400万年前に母島列島が形成されました。
現在も活動中の火山列島と並んでおり、プレートの沈み込み帯における海洋性島弧の形成と進化の過程を、沈み込みの初期段階から今現在、進行中まで観察する事ができます。
初期段階から今現在進行中を確認できるのは小笠原諸島が世界唯一の地域であります。また、貨幣石と言われる有孔虫の化石をはじめとする亜熱帯性動物化石群も見る事が出来ます。このように貴重な地域である点が世界自然遺産登録に繋がったと言えます。
小笠原の地形・地質を見る

独自の生態系



昔から今の現在の状態も確認できるだなんてまるで昔にタイムスリップしたかのような体験ができて面白いね!

確かにそうだね!4,800年前だもんね!そして亜熱帯性動物化石群も見る事ができるなんて他では体験ができなく貴重だねえ。

そうだね!地層の進化はなかなか見れないし、このように貴重な地形・地質である点が小笠原諸島を世界自然遺産登録のポイントになったと言えるね。

そうね、次は小笠原諸島の生態系について見てみましょう!

小笠原諸島の生態系


小笠原諸島は、生物が様々な環境に適応する為、多くの種群に分かれる過程を見ることができる地域であります。父島・兄島では乾性低木林(かんせいていぼく)と呼ばれる背の低い林がたくさん広がっております。父島や兄島の乾燥している気候に合わせて、葉の形を変える等の進化をした固有の植物たちが生育しています。
一方、母島では湿性高木林(しっせいこうぼくりん)と呼ばれる、湿度が高く雨の多い環境を好む背の高い森林が広がっています。小笠原諸島では、空や海を越えることのできた限られた生物だけが島にたどり着き、島の環境に合ったものだけが生き残り、更に適したものへと独自の進化を遂げてきました。こうした進化をしてきた結果、小笠原諸島固有の生物が数多く生息・生育しています。

小笠原諸島に生息する生き物たち



父島と母島では生態系が異なるからこそそれぞれの島に生息する生物が違っているね。

同じ小笠原諸島でも違っているのは面白いよね!

それぞれ異なる生態系で各島どんな生物が生息しているかな?

それじゃあ、次は各島の生物を分類ごとに見てみよう。

小笠原諸島の生物を見る

小笠原諸島に生息する鳥類

まずは海鳥について見てみましょう。小笠原諸島ではこれまでに20種類の海鳥の繁殖が確認されております。その中でも数が多く見られるのは「カツオドリ」という熱帯・亜熱帯海域に生息している海鳥や「クロアシアホウドリ」という北太平洋の中で2番目に大きい海鳥や、「オナガミズナギドリ」という日本で唯一、小笠原諸島でのみで繁殖が確認されている珍しい海鳥が生息しています。

■クロアシアホウドリ
次に陸鳥について見てみましょう。小笠原諸島ではこれまでに15種類の海鳥の繁殖が確認されており、多くの陸鳥が固有種となっています。その中にはかつて幻の鳥と言われるほど珍しい「アカガシラカラスバト」と出会うことができます。首と胸まわりが緑紫色の金属光沢を帯びていて、頭部が光沢のあるピンク色をしており、美しい鳥であり、生息数は40-60羽であり、日本で最も絶滅が危惧されている鳥です。その他にも母島を象徴し、母島列島のみに生息する「ハハジマメグロ」や固有哺乳類の「オガサワラオオコウモリ」もいます。

■ハハジマメグロ

小笠原諸島に生息する昆虫類

昆虫類について見てみましょう。小笠原諸島の中で、父島では「オガサワラハンミョウ」、「オガサワラゼミ」などの固有種が多くいます。母島には「オガサワラシジミ」という絶滅の可能性が示唆されている絶滅危惧種の蝶がいます。また弟島という現在無人島の島には父島でかつて生息していた「オガサワライトトンボ」、「オガサワラアオイトトンボ」、「ハナダカトンボ」、「シマアカネ」、「オガサワラトンボ」のすべてが生息しております。

小笠原諸島に生息する陸産貝類


■ヒロベソカタマイマイ
陸産貝類について見てみましょう。小笠原諸島では、106種の陸産貝類(りくさんかいるい)が記録されており、その内の100種が固有種であります。その中でも、カタマイマイ属などでは適応放散(てきおうほうさん)という生物の進化に見られる現象によって、種分化(しゅぶんか)の典型が見られます。さらに現在も新種の発見が続いており、7つの固有属があることが知られています。このように数多くのカタツムリが生息しているのでカタツムリの楽園と言われております。

小笠原諸島に生息するクジラ類・ウミガメ類


■イルカ

■ウミガメ
クジラ類・ウミガメ類について見てみましょう。小笠原諸島では、24種類のクジラやイルカが確認されており、地球上最大の生き物であるクジラたち、野生のイルカたちに出会うことができます。
2-4月のベストシーズンにはザトウクジラが、5-11月にはマッコウクジラをウォッチングすることができます。陸上でも洋上でもクジラの姿をみることができ、国内屈指のホエールウォッチングフィールドとなっています。また、小笠原諸島でよく出会えるのは野生のミナミハンドウイルカ・ハシナガイルカで、1年を通して遭遇することができます。
さらに小笠原諸島は日本最大のアオウミガメの繁殖地となっております。5月から8月が産卵の時期になっており、特に7月は産卵シーズンであり、砂浜で産卵が行われます。出産の姿を見に行く際はウミガメを驚かさせないよう気を付けましょう。

小笠原の美しき自然を守るために



小笠原諸島では固有種や滅多に出会えない生物と出会えるね!普段出会えない生物を見る事ができるのは良いなあ!

そうね。だからこそ小笠原諸島の自然は大切に守っていかないといけないと!

確かに。旅行する際も自然を守りながらだね。

小笠原諸島の自然を守るために「小笠原諸島カントリーコード」というものがあるんだよ。

そうなんだ!詳しく知りたいから見てみよう!

小笠原諸島のエコーツーリズム

小笠原諸島には、貴重な自然を守るために「小笠原諸島カントリーコード」という自然と共生するための10ヵ条があります。
1.貴重な小笠原を後世に引き継ぐ」
2.「ゴミは絶対に捨てずに、すべて持ち帰る」
3.「歩道をはずれて歩かない」
4.「動植物は採らない、持ち込まない、持ち帰らない」
5.「動植物に気配りしながらウォッチングを楽しむ」
6.「サンゴ礁等の特殊地形を壊さない」
7.「来島記念などの落書きをしない」
8.「全島キャンプ禁止となっているので、キャンプしない。」
9.「移動は、できるだけ自分のエネルギーを使う」
10.「水は大切にし、トイレなど公共施設はきれいに使う」
の10ヵ条となっております。ご旅行される際はこちらの10ヵ条を守りながら小笠原諸島を存分に楽しみましょう。
小笠原諸島カントリーコードについて見る

守っていきたい美しい自然



小笠原諸島の自然を守るために様々な取り組みをしているんだね。

そうだね。「小笠原諸島カントリーコード」以外にも、絶滅に瀕している小笠原固有の種の保護・増殖や、新たな外来種の侵入防止、既に侵入し生態系への影響が特に大きな外来種の駆除など、様々な取り組みを行って小笠原諸島の自然を守っているんだよ。

そうなんだ!美しい小笠原諸島を守るために素晴らしい取り組みだね。小笠原諸島の魅力を知り、より興味持って早く行きたくなってきたよ!

それは良かったよ!小笠原諸島は人気だから予約は早めにね!


小笠原諸島が世界自然遺産登録の経緯についてまとめました。「地形・地質」「生態系」「生物多様性」それぞれ魅力的であり、今後も大切に守っていかなければならない島になっております。小笠原諸島は大人気な島であり、ご予約がすぐ埋まる可能性がありますので気になった方はお早めのご予約を!
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