最終更新日:2024年7月23日
式根島北西部、野伏港と小浜港の中間にある標高50mの高森山からは約4km離れた新島が眺められます。新島・式根間の海峡は黒潮の流れが急で、昔から新月の夜などに海難事故が多発していました。
昭和5年(1930)、度重なる漁船の事故に心を痛めた式根島民「宮川タン」さんは、独力で高森山に灯台を築くことを決意します。この時タンさんは70歳。山を開いて石段を作り、孫たちやはじめ懐疑的だった周囲の人々の助けも得て、5年後の昭和10年(1935)75歳の時に高森灯台を完成させました。当時の式根島ではまだ電気が使えなかったため、灯台の明かりは石油ランプが使われ、コーガ石製のランプ台に置かれました。山頂には灯台のほか、海上安全、大漁祈願とともに安全祈願の観音様を祀っています。
灯台完成後、タンさんは88歳になるまで毎日灯台に火を灯し続けました。片手に杖、片手に石油を入れたビンを持ち、毎日急な石段を登るタンさんの姿は多くの人に感銘を与えたと言われています。
宮川タンさんと高森灯台の逸話は『小さな島の小さな星』(久保喬・文、鈴木義治・画 1984)という児童文学として出版されています。明治〜昭和初期の離島の厳しい環境のなか、人間愛に溢れる一人の女性を描く感動的な作品です。式根島に行った方、行ってみたい方は機会があれば一度読んでみてください。
(現在は入手困難ですが、公共図書館などに比較的蔵書があります)
参考文献
樋口 秀司 (編)『伊豆諸島を知る事典』(2010)東京堂出版.
久保喬(文)鈴木義治(画) 『小さな島の小さな星』(1984)童心社.