お鉢巡り
富士山の山頂には大きな旧噴火口があり、この噴火口をぐるりと一周して火口壁があります。この火口壁の上を登山道が通っており、この火口を一周することを『お鉢巡り(おはちめぐり)』と呼びます。その火口外周壁の最も高いところが、日本の最高地点『剣ヶ峰(けんがみね)』となります。
一般的にもそう呼ばれています。
登頂の疲労や時間的な余裕の無さからか、意外に行われていないのがお鉢巡りと、富士山の最高地点である剣ヶ峰への登頂。お鉢巡りで火口の周囲を巡って様々な表情を見比べることも富士登山の醍醐味のひとつとなっているのです。何より、自分の足で火口の周囲を歩くことで火口の大きさ、ひいては富士山のスケールの大きさが実感出来る事でしょう。
富士山の火口の底は大内院(だいないいん)と呼ばれ、深さは8合目にまで達するほどだそうです。大内院は幽宮とも称され、富士浅間大社により禁足地(足を踏み入れてはいけない聖域)とされています。
お鉢巡りはその名の通り火口に沿ってぐるっと山頂を一周していますから、右回り(時計回り)にも、左回り(反時計回り)にも好きに選ぶことができます。
では、どちらから回るのがいいのかというと、右回りをお薦めします。理由は、剣ヶ峰直下にある、『馬の背』と呼ばれる最後の難所を登るか降るかで危険度が全く違うからです。
馬の背は、その名の通り峰の左右両側が切れ落ちて崖のようになっていますが、登山路のある斜面自体がとても急傾斜で、尚且つ固い岩盤の上に砂が載った、とても滑りやすい斜面です。この斜面で転んで怪我をする人は少なくないようですが、その多くが馬の背を下るときに足を滑らせて転倒しています。馬の背に限らず、登山は登るときよりも下るときの方が難易度が高く、転倒などで怪我をしやすいのです。滑りやすい砂の載った斜面であれば、尚更です。
本来お鉢巡りは仏教の礼法である右繞(うにょう)に基づき、右回りを正式とするようです。
また、ご高齢の方や小さなお子さんを連れた方は、馬の背自体を避ける選択も有り得ます。これは、剣ヶ峰までは左回りで登り、下りは同じ道を右回りで戻って往復して降りてくるのです。御殿場ルートや富士宮ルートから登って来た人は遠回り(往復2時間半)になりますが、安全性は絶対的に高い方法です。